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2025.08.05

版画とリトグラフの違いって何?買取につながる見分け方をご紹介

版画とリトグラフは、どちらも芸術作品として広く親しまれている印刷技法ですが、その制作工程や歴史、表現の特性には大きな違いがあります。一般的に「版画」と聞くと、木版画や銅版画など、彫刻刀や腐食技法を用いた伝統的な表現が思い浮かぶかもしれません。一方、リトグラフ(石版画)は、油と水の反発作用を応用した、19世紀以降に発展した比較的新しい版画技法であり、絵画のような滑らかで繊細な表現が可能です。

版画という言葉自体は非常に広義であり、木版・銅版・石版・シルクスクリーンなど、さまざまな技法を含む総称です。その中でリトグラフは「平版」と呼ばれる技法に分類され、特に多色刷りの美術作品やポスター、現代アートの制作に多く使われてきました。木版画のように彫る作業を必要とせず、直接描くような感覚で制作できることから、多くの著名な画家たち、たとえばピカソ、シャガール、ロートレックなども積極的にこの技法を取り入れています。

また、版画とリトグラフの違いは、単に技法の差異にとどまらず、制作工程の自由度や色彩の表現力、そして作品としての質感や風合いにも表れます。木版や銅版などの凹凸を活かした版画は、刷り上がりに立体感や力強さを持たせる一方で、リトグラフは滑らかで均一なトーンや繊細な陰影の表現に優れており、まるで画用紙に描いたような柔らかな仕上がりを特徴とします。

本稿では、まず版画の基本的な分類とそれぞれの技法について概観したうえで、リトグラフの成り立ちや技術的特徴を詳しく掘り下げていきます。そして、両者の工程・材料・表現力の違いを比較しながら、それぞれの芸術的価値や市場性についても触れてまいります。美術品としての鑑賞のみならず、収集や売買を検討している方にとっても、これらの違いを理解することは大いに役立つでしょう。版画とリトグラフ、それぞれの魅力と特性を通して、より深く芸術の世界に触れてみませんか?

1. はじめに 〜版画の多様な世界〜

版画とは、版を用いて紙や布などに同一の図柄を複製する技法の総称であり、その歴史は古く、古代中国やエジプトの文明にまで遡ることができます。日本では奈良時代に仏教経典を大量に印刷するために木版が使用され、やがて江戸時代の浮世絵に代表されるような美術としての発展を遂げました。

しかし一口に「版画」といっても、その技法は非常に多岐にわたります。本稿では、代表的な四つの版画技法──木版画(総称としての版画)、リトグラフ(石版画)、シルクスクリーン(孔版画)、エッチング(銅版画)について、各技法の特徴、制作工程、歴史的背景、表現の特性、そして収集や鑑賞における見どころを比較しながら、違いをわかりやすく解説いたします。


2. 版画技法の4分類とその基本

版画技法は、一般的に以下の四種類に分類されます。

分類 技法例 特徴
凸版 木版画 彫った部分以外が印刷される
凹版 エッチング、銅版画 彫った部分にインクを流し込む
平版 リトグラフ 油と水の反発作用を利用した技法
孔版 シルクスクリーン 版に開けた孔からインクを通す技法

3. 木版画(凸版)〜最も古くからある版画〜

特徴と工程

木版画は「凸版画」の代表的な技法で、彫られていない部分にインクを付けて紙に刷る方式です。原理としては、ハンコのような仕組みです。墨や絵具を刷毛で版面に塗り、和紙を当ててばれんで擦ることで転写され買取が期待できます。

  1. 下絵を作成

  2. 板に写す

  3. 彫刻刀で不要部分を彫る

  4. インクをのせる

  5. 紙をあてて刷る

特性

  • 線や色面が力強い

  • 彫る工程があるため作業に時間がかかる

  • 日本の浮世絵、仏教経典などで多用

代表的買取対象作家

  • 葛飾北斎

  • 東洲斎写楽

  • 棟方志功


4. リトグラフ(石版画/平版)〜油と水の反発を利用する技法〜

特徴と工程

リトグラフは「平版画」に分類され、石灰石またはアルミ版の上に油性のクレヨンやインクで描画し、水と油の反発作用で印刷する技法です。彫る工程がなく、紙に描くような自然な表現が可能で買取が期待できます。

  1. 油性クレヨンで石に描く

  2. 薬品で描線部分を定着

  3. 水をかける(描線以外が水を含む)

  4. 油性インクを塗る(描線部分のみに付着)

  5. プレス機で紙に刷る

特性

  • 絵画的な柔らかいタッチの表現が可能

  • 多色刷りにも対応

  • 彫刻が不要なため自由度が高い

代表的買取対象作家

  • アンリ・ド・トゥールーズ=ロートレック

  • パブロ・ピカソ

  • マルク・シャガール


5. シルクスクリーン(孔版)〜現代アートに多用される技法〜

特徴と工程

シルクスクリーンは「孔版画」に分類される技法で、版に細かな穴を空け、インクをヘラ(スキージー)で押し出すことで刷る方式です。ステンシルに似た手法で、色面をくっきりとした発色で表現でき作家により買取が期待できます。

  1. メッシュ状の版に防染剤で絵柄を作成

  2. 空いている部分からインクを押し出す

  3. 色ごとに版を変えて重ね刷りする

特性

  • 発色が非常に鮮やかでポップな印象

  • プリントのように均一で綺麗な仕上がり

  • ファッションや広告など幅広い用途

代表的買取対象作家

  • アンディ・ウォーホル

  • 草間彌生

  • 奈良美智


6. エッチング(銅版画/凹版)〜繊細な線描表現が可能〜

特徴と工程

エッチングは「凹版画」に分類され、金属板を腐食させて溝を作り、その溝にインクを流し込んで刷る技法です。彫る代わりに酸で溶かして描線を作るため、繊細でやわらかな線の表現に向いています。

  1. 銅板に防蝕剤(グランド)を塗る

  2. 針で描く(下地が削られる)

  3. 酸に浸して腐食させる

  4. インクを詰める

  5. プレス機で刷る

特性

  • 線の表現が繊細で陰影描写に優れる

  • 写実的な画風や幻想的な雰囲気を出せる

  • 職人的な技術が要求される

代表的買取対象作家

  • フランシスコ・ゴヤ

  • アルブレヒト・デューラー

  • ルイーズ・ブルジョワ


7. 各技法の比較一覧表

技法 分類 特徴 表現力 主な用途・分野
木版画 凸版 彫った以外が刷られる 力強く明快な線や色面 浮世絵、日本画
リトグラフ 平版 油と水の反発で刷る 絵画のような自然な表現 ポスター、現代アート
シルクスクリーン 孔版 孔からインクを押し出す 鮮やかで均一な色面 ファッション、現代美術
エッチング 凹版 酸で腐食させた溝にインクを入れる 繊細な線描と陰影 古典画、幻想的な作品

8. 作品価値や保存性の違い

版画作品の価値は、技法の難易度、作家の知名度、制作枚数(エディション数)、保存状態などによって大きく左右されます。特にリトグラフやエッチングでは、作家の直筆サインやナンバリングが入っているものが多く、アートマーケットでも評価されやすい傾向にあります。

また、木版画やエッチングなどの伝統的な技法は、刷りの技術や紙質によって大きく仕上がりが左右されるため、作品の完成度や刷師の力量も重要な要素となります。

保存面では、どの技法も直射日光や湿気、高温に弱いため、額装して紫外線カットガラスを使うなどの対策が求められます。


9. まとめ 〜それぞれの版画に宿る個性〜

本稿では、代表的な版画技法である木版画、リトグラフ、シルクスクリーン、エッチングについて、その違いを多角的にご紹介いたしました。いずれの技法にも固有の魅力があり、作家の表現意図や技術的な挑戦が込められています。

  • 木版画は日本文化を象徴するような伝統美があり、

  • リトグラフは絵画と版画の融合による自由な表現、

  • シルクスクリーンは現代的で大胆な色彩、

  • エッチングは繊細で詩的な世界観を演出します。

版画という芸術は、単なる複製ではなく、「版を通して生まれる唯一無二の表現」であるという点が最大の魅力です。それぞれの技法の違いを理解することで、作品の奥深さや作家の意図にもより深く触れることができるでしょう。

版画を高価買取してもらう方法

はじめに ~版画市場の実情を知ることから~

版画は、美術品の中でも比較的手の届きやすい価格帯から高額取引される作品まで、幅広い市場があります。特に現代では、ピカソやシャガール、棟方志功、草間彌生といった有名作家の版画はコレクターや投資家からの需要が高く、状態が良ければ数十万円、時には数百万円の価値がつくことも珍しくありません。

しかしながら、ただ単に「有名作家の版画を持っている」だけでは、高価買取は期待できません。実際には、作品の状態や保存方法、エディション番号、証明書の有無、売却のタイミングや売り先の選定など、さまざまな要素が価格を左右します。

ここでは、版画を高く売るために押さえておくべき重要なポイントを7つの視点から丁寧に解説してまいります。


1. 作家の知名度と人気を把握する

まず第一に、作品の作家が誰であるかは買取価格を大きく左右します。市場で高く評価されている作家の版画は、当然ながら需要が高くなり、高価買取が期待できます。

人気のある作家の例:

  • ピカソミロシャガール(海外)

  • 棟方志功平山郁夫斎藤清草間彌生(国内)

  • アンディ・ウォーホルキース・ヘリング奈良美智(現代美術)

特にエディション付きのオリジナル版画やサイン入りの作品は、リトグラフやエッチング、シルクスクリーンなどを問わず、プレミアムがつく傾向にあります。

鑑定ポイント:

  • 作家名

  • サイン(直筆か印刷か)

  • 限定番号(例:12/50 など)

  • 制作年


2. エディション番号とサインの有無を確認する

版画には同じ図柄を複数枚刷る性質上、「何枚目の印刷か」を示すエディション番号が記載されています。例えば「25/100」とあれば、100枚中の25番目の作品という意味になります。

エディションが重要な理由:

  • 少数限定であるほど価値が上がる傾向

  • 初期の番号(1/50など)や、EA(作家保存用)など特殊エディションは希少価値が高い

  • 作家直筆のサインがあることで真正性が担保される

このような要素が確認できる場合、買取査定額は数万円〜数十万円単位で変動することもあります。売却前には必ず額の裏や作品下部をチェックしましょう。


3. 保存状態を整える・改善する

版画の買取価格に大きく影響するのが保存状態です。以下のようなダメージがある場合、評価は著しく下がります。

主な劣化要因:

  • 日焼け(退色)

  • 湿気によるカビ・波打ち

  • シミ・黄ばみ(酸化)

  • 額装の劣化(ガラス割れ・裏打ち紙の変色)

高価買取のための保存方法:

  • 直射日光・湿気のない場所に保管

  • 額装する際はUVカットガラス・アクリルを使用

  • 元箱・黄袋・鑑定書がある場合は一緒に保管

また、専門の修復業者に依頼して状態を回復させることで、数万円以上の査定アップにつながるケースもあります。ただし費用とのバランスは要確認です。


4. 付属品(共箱・黄袋・証明書)を揃える

高額取引される版画には、しばしば以下の付属品がセットになっています。

  • 共箱(作家名・タイトル入りの木箱や紙箱)

  • 黄袋・保護紙

  • ギャラリー発行の販売証明書

  • サイン証明や落款付き鑑定書

これらが完備されていると、「真正品である証明」となり、買取業者としても高値を付けやすくなります。

逆に、証明書がない場合は「贋作の可能性」があるとして、査定価格が半額以下になることもあります。


5. 売却先の選び方が決め手

版画を売る際には、どこに売るかが非常に重要です。以下は主な売却先とその特徴です。

売却先 メリット デメリット
骨董・美術専門店 美術品に特化し相場に詳しい 業者によって得意分野に偏りがある
オークション(国内/海外) 希少作品なら高騰する可能性あり 手数料や最低落札額の設定が必要
ネット買取業者 全国対応、手軽に見積もりできる 査定が画一的になりがち
百貨店の美術催事 富裕層バイヤーとのマッチングが期待できる 出展条件が厳しい、委託形式が多い

最も確実に高価買取を目指すなら、複数業者に見積もりを取って比較することが重要です。近年は「一括査定サイト」や「LINE査定」など、写真を送るだけで概算価格が分かるサービスもあり、便利に活用できます。


6. 売却のタイミングも重要

アート市場にも「相場の波」が存在します。たとえば、作家の回顧展や作品の再評価が起こると、価格が上昇することがあります。また、作家の命日や記念年にはコレクターが作品を探す傾向が強まるため、売却のチャンスとなります。

さらに、**年末や年度末(12月・3月)**は、美術業者の在庫仕入れ期にも重なるため、買い取りが活発になる傾向があります。こうした市場の動きを見ながら、売却の時期を選ぶと高価買取につながるでしょう。


7. 売る前に情報を整理しておく

最後に、買取査定の前に以下の情報を整理しておくと、スムーズかつ高く売却できます。

  • 作家名、作品タイトル、制作年

  • エディション番号(何枚中の何番)

  • サインの有無

  • サイズ(画面サイズと額装サイズ)

  • 購入時の資料(ギャラリー名、価格など)

このような情報は業者が真正性を確認し、価値を判断する上で重要な手がかりとなります。わからない項目があっても、最低限、作家名・サイン・エディションは必ず確認しましょう。


まとめ 〜版画の価値を最大限に引き出すために〜

版画は、適切な管理と情報の把握、そして信頼できる売却先の選定によって、価値を最大限に引き出すことが可能なジャンルです。

高価買取を実現するためには、以下の7つのポイントを押さえてください。

  1. 作家の知名度と市場価値を把握する

  2. エディションやサインの有無を確認する

  3. 保存状態を良好に保つ

  4. 証明書や共箱などの付属品を揃える

  5. 売却先を慎重に選定する

  6. 市場の動向を見て売却タイミングを計る

  7. 査定前に必要情報を整理する

これらを実践することで、ただの「作品の処分」ではなく、「価値ある資産の高価買取」が期待できます。

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この記事を書いた人

東京美術倶楽部 桃李会
集芳会 桃椀会 所属

丹下 健(Tange Ken)

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