- 掛け軸
掛け軸の基本知識、買取に繋がる作家をご紹介!
掛け軸とは、日本の伝統的な絵画や書を装飾的に表装し、床の間などに掛けて鑑賞するための美術形式でございます。中国から伝来した巻物文化を基に、日本独自の美意識や生活様式と融合し、平安時代から現代に至るまで多くの人々に親しまれてまいりました。掛け軸は単なる芸術作品ではなく、季節感や精神性、もてなしの心を表現する道具としても重要な役割を果たしております。特に茶道や仏教の場面においては、掛け軸の選定がその空間全体の趣や意味を左右すると言われるほど、奥深い文化的背景を持っております。本稿では、掛け軸の歴史的背景、構造、種類、鑑賞方法、さらには取り扱いや保存の注意点まで、基礎知識を丁寧に解説し、初めて掛け軸に触れる方にもわかりやすくご案内いたします。日本文化を理解する一助として、ぜひ掛け軸の魅力をご堪能くださいませ。
はじめに
掛け軸(かけじく)は、日本の伝統的な装飾芸術であり、書や絵画などを布や紙に貼り付け、巻物状にして収納できるようにした美術品です。主に床の間に掛けて鑑賞され、茶道、書道、仏教行事など多くの日本文化と密接に関わってまいりました。掛け軸は、単なる芸術作品ではなく、季節や場の雰囲気を演出するための重要な役割も担っております。
本稿では、掛け軸の起源や構造、種類、鑑賞方法、保管・取り扱いの注意点までを幅広く解説し、掛け軸に関する基礎知識をわかりやすく丁寧にご紹介いたします。
掛け軸の歴史と起源
掛け軸の起源は中国にさかのぼります。中国では「巻軸(けんじく)」という形式が古くから存在し、仏教の経典や絵画を巻物にして保管・閲覧していました。この技術が仏教とともに日本に伝わり、日本独自の形に発展していったのが「掛け軸」でございます。
奈良時代には仏教美術として仏画が描かれ、寺院において礼拝の対象として使用されました。平安時代以降、貴族文化が花開く中で、詩歌や書が書かれた掛け軸が登場し、鎌倉時代には禅宗の影響を受けて水墨画や書が盛んに制作されるようになります。
室町時代には「床の間」という建築様式が生まれ、これに伴って掛け軸が室内装飾の中心的存在となりました。安土桃山時代から江戸時代にかけては、茶道の普及により茶室に掛ける軸が重視され、千利休をはじめとする茶人たちが「軸の選定」を茶道の美意識として重視いたしました。
掛け軸の構造と名称
掛け軸は、いくつもの構成要素から成り立っています。それぞれの部分には日本ならではの名称が付けられており、美術品としての価値のみならず、装飾技術の粋を感じさせます。
1. 本紙(ほんし)
掛け軸の中心となる絵や書が描かれている部分を「本紙」と呼びます。本紙には紙や絹が用いられます。紙の場合は和紙、絹の場合は「絹本(けんぽん)」と呼ばれ、それぞれに異なる風合いや味わいがあります。
2. 表装(ひょうそう)
本紙の周囲に取り付けられる布地や紙を「表装」と言い、掛け軸の完成度や美しさを左右する重要な部分です。表装には「裂(きれ)」と呼ばれる布が用いられ、一般的には絹製の金襴(きんらん)、緞子(どんす)、無地裂などが使われます。表層の良い掛け軸は買い取り対象となります。
3. 天地(てんち)
本紙の上下に配された表装部分で、上部を「天」、下部を「地」と呼びます。天地にはそれぞれバランスよく柄や色合いを整え、構図を引き締める役割がございます。
4. 一文字(いちもんじ)
本紙の上下に細く取り付けられる布地で、作品の額縁のような役割を果たします。金襴や上質な裂地が用いられることが多く、格式を表す一つの指標でもあります。
5. 中廻し(ちゅうまわし)
本紙の左右を囲むように取り付けられる部分で、作品の雰囲気を引き立てます。中廻しの色や柄は、本紙と調和するように選ばれます。
6. 軸先(じくさき)
掛け軸の下部の軸棒の両端に取り付けられた飾りのことで、木製、象牙、陶磁器などさまざまな素材がございます。軸先の形状や素材も作品の格に関わる重要な要素です。軸先ほ古い掛け軸も買取対象となる場合もあります。
掛け軸の種類
掛け軸にはさまざまな種類があり、内容や用途、形式によって分類されます。以下に代表的な種類をご紹介いたします。
1. 書軸(しょじく)
書道作品を掛け軸にしたものです。有名な書家による漢詩や和歌、禅語などが記されており、力強さや静けさを表現します。茶室で使用されることも多く、精神性を表現するものとして重視されます。
2. 画軸(がじく)
絵画が描かれている掛け軸です。山水画、花鳥画、人物画、動物画など多岐にわたり、季節に応じて掛け替えることも多くございます。絵師の技術や構図力が鑑賞のポイントとなります。
3. 仏画(ぶつが)
仏教に関連する仏像や菩薩、曼荼羅などを描いた掛け軸です。寺院や仏間に掛けられることが多く、礼拝の対象にもなります。
4. 禅画(ぜんが)
禅僧が描いた水墨画や書などで、簡素な構図の中に深い思想や精神性が込められています。白隠慧鶴や仙厓義梵などの作品が有名です。
5. 掛け物(かけもの)と対幅(ついふく)
左右一対で飾られる掛け軸を「対幅」と申します。通常は左右対称の構図や、連続した画面が描かれます。祝儀や行事の場で使用されることもございます。
掛け軸の鑑賞と使用の心得
掛け軸の鑑賞においては、単に作品を見るだけではなく、場の雰囲気や季節感、精神性を読み取ることが大切です。
1. 季節感の重視
掛け軸は季節ごとに掛け替えるのが基本とされております。春には梅や桜、夏には涼やかな山水画、秋には紅葉、冬には雪景色など、自然の移ろいに合わせた題材を選ぶことで、室内に季節感を演出できます。
2. 茶道における掛け軸
茶室における掛け軸は、「主客の心を結ぶもの」とされております。亭主が客人に伝えたい心情や美意識を、掛け軸の言葉や画題を通して伝える役割を担っております。
3. 年中行事との関係
正月や節句など、特別な行事にあわせて用いる掛け軸も存在します。祝い事の際には「寿」や「鶴亀」など縁起の良い題材が好まれます。
掛け軸の保存と取り扱いの注意点
掛け軸は非常に繊細な工芸品であり、正しく保管・取り扱いをしなければ劣化や損傷につながります。
1. 湿気と直射日光の対策
和紙や絹は湿気や日光に弱いため、長時間の展示は避け、直射日光の当たらない場所に掛けるよう注意が必要です。展示後は風通しの良い場所で陰干しすることをおすすめいたします。
2. 保管方法
使用していないときは、専用の桐箱に納め、湿度の安定した場所で保管します。防虫香などを入れて虫害を防ぐ工夫も有効です。
3. 巻き方と取り扱い
巻く際は本紙にシワが寄らないよう、ゆっくり丁寧に巻いていきます。特に絹本の場合、折り目や摩擦が劣化の原因になりますので慎重な操作が求められます。
おわりに
掛け軸は、日本文化の粋とも言える伝統工芸品であり、美術品でございます。一幅の掛け軸には、描き手の技術だけでなく、季節感、精神性、そして空間を演出する力が込められております。茶道や書道、仏教美術との関わりも深く、それぞれの場面で異なる役割を果たしてまいりました。
掛け軸の世界に親しむことで、単に「見る」こと以上の豊かな感性が養われ、日本文化への理解がより深まることでしょう。今後もこの伝統が受け継がれていくよう、大切に扱い、学び、次世代へと伝えてゆくことが求められております。
高価買取が期待できる掛け軸の作家について
はじめに
掛け軸は日本の伝統的な美術品であり、書や絵画が表装された巻物形式の装飾品として、長きにわたり多くの人々に愛されてまいりました。その中でも、有名な作家による作品は現在でも高い評価を受けており、骨董市場や美術品市場において高額で取引されることがございます。
以下では、高価買取が期待される著名な掛け軸の作家を、書・画それぞれの分野からご紹介し、作風や評価のポイントについても解説いたします。
1. 富岡鉄斎(とみおか てっさい)【1836年~1924年】
富岡鉄斎は、幕末から明治・大正時代にかけて活躍した文人画家であり、儒学・仏教・書道・漢詩・南画など多方面に通じた「最後の文人」とも称されております。鉄斎の掛け軸作品は、文人趣味に満ちた詩書画一体の世界観が特徴で、独特のユーモアや哲学的深みが高く評価されております。
彼の作品は保存状態が良ければ数十万円から百万円以上の価格で買い取りされることもあり、現代でも非常に人気の高い作家の一人でございます。
買取のポイント:
・署名と落款が明瞭なもの
・共箱(作家の署名のある箱)付き
・紙本よりも絹本の作品が高評価
2. 横山大観(よこやま たいかん)【1868年~1958年】
日本画の巨匠であり、明治から昭和にかけて活躍した横山大観は、岡倉天心とともに東京美術学校(現・東京藝術大学)の創設に関わり、近代日本画の発展に大きく寄与した人物でございます。水墨画の技法を発展させた「朦朧体(もうろうたい)」という表現が特徴で、山水画や富士山のモチーフとした掛け軸が買取されております。
大観の掛け軸は、真筆であれば非常に高価で、状態や作品内容によっては数百万円単位での買取が期待されます。
買取のポイント:
・鑑定書の有無(模写が多いため)
・代表的な題材(富士山、松、山水など)
・保存状態と共箱の有無
3. 川合玉堂(かわい ぎょくどう)【1873年~1957年】
川合玉堂は、日本画家として山水画の第一人者ともいえる存在でございます。自然と人々の営みを繊細に描き出す表現が特徴であり、特に農村風景や山里の四季を描いた作品に人気が集まっております。
玉堂の掛け軸は、流麗な筆致と淡い色使いが評価され、保存状態が良ければ数十万円から数百万円程度で買取されることもあります。
買取のポイント:
・山水画・農村風景の作品が高評価
・落款や印章の明瞭さ
・鑑定書や共箱の有無
4. 東山魁夷(ひがしやま かいい)【1908年~1999年】
東山魁夷は戦後日本を代表する風景画家であり、その静謐で詩的な作品世界は国内外で高く評価されております。特に「道」「緑響く」などの作品が有名で、作品に描かれる自然は心の情景として多くの人々に愛されています。
掛け軸としては比較的後期の作品が多く、肉筆よりもリトグラフや木版が見られることもございますが、真筆であれば非常に高価で取引されます。
買取のポイント:
・真筆作品であること(複製が多いため注意)
・風景モチーフが中心
・共シール、鑑定書付きが望ましい
5. 白隠慧鶴(はくいん えかく)【1686年~1769年】
白隠は江戸時代中期の臨済宗の禅僧であり、書画においても多くの作品を残しました。禅画の中でも特に人気があり、「達磨図」「布袋図」「円相」などは非常に高価で取引されることがございます。
作品は墨一色で描かれるシンプルなものが多く、禅の教えを感じさせる深い精神性が評価されております。
買取のポイント:
・真筆作品かどうか(模写や弟子による作品が多い)
・印や落款が明確
・仏画や禅語の書軸も人気あり
6. 渡辺崋山(わたなべ かざん)【1793年~1841年】
江戸時代後期の蘭学者であり画家としても名高い渡辺崋山は、写実的な人物画・風景画で高い評価を受けております。特に中国風の山水画や肖像画は、学問と美術の融合として注目されており、文化財としての価値も高い作家です。
買取のポイント:
・保存状態と鑑定書の有無
・人物画は特に高額になりやすい
・弟子や一門の作も需要あり
高価買取のための共通ポイント
どの作家の掛け軸であっても、以下のような要素が高価買取につながりやすくなります。
-
真筆かどうか(真贋)
→ 鑑定書の有無や有名鑑定人による保証があると安心です。 -
共箱の有無
→ 作家の署名が入った箱があると評価が上がります。 -
保存状態の良さ
→ 汚れや虫食い、裂地の破損がないことが望ましいです。 -
人気の画題・モチーフ
→ 富士山、鶴亀、松竹梅、四季の花鳥などは需要が高いです。 -
展覧会出品歴や由緒がある場合
→ 有名なコレクションに由来する作品などはプレミアがつきます。
おわりに
掛け軸の買取市場においては、上記でご紹介した作家の作品が特に高額で取引される傾向にございます。美術的価値はもちろんのこと、作品の背景や由緒、保存状態が大きく影響いたしますので、もしお手元に該当する掛け軸がございましたら、専門業者による丁寧な査定を受けることをおすすめいたします。
また、掛け軸の世界は模写や贋作も多いため、真贋の見極めが非常に重要です。信頼できる美術商や鑑定士にご相談いただくことで、作品の正当な価値を把握することができ、高価買取への道が開かれることでしょう。
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この記事を書いた人
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丹下 健(Tange Ken)

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